新居製藍所:藍染になくてはならないスクモづくりの現場 ②

藍の花

徳島県・上板町。
前回訪問した6月と比べ、少し涼やかになった10月のはじめ。
取材当日はやや曇り気味の天気でしたが、雨が降ることもなく、気温も安定していました。

10月といえば、藍の花が咲く季節。
新居製藍所周辺の藍畑では、藍が開花し、可愛らしい花が目を楽しませてくれました。

藍の畑
※ 藍の畑。ミツバチもお仕事中。ブンブン羽音が聞こえてきます。

今回の取材では、藍染の原料・スクモの製造工程の一つ、「寝せ込み」の様子を見学させてもらいました。

新居製藍所
※ 寝せ込みにかかる前の様子。

藍師によって異なる寝せ込みの開始時期。
新居さんの製藍所では、暑さも和らいだ10月の上旬からはじめます。
寝せ込みはこの時期の大安の日を選んで行われます。

阿波藍:寝せ込み
※ 藍の葉の入った俵(ずきんとも云う)を、土間のある寝床(ねどこ)に運び入れる。

藍の葉の入った俵を大人二人がかりで持ち上げます。乾燥しているとはいえ、結構な重さです。

阿波藍:寝せ込み
※ 乾燥した藍の葉を土間に広げます。

新居さんの製藍所の寝床は、3年に一度、土の入れ替えをしています。

使われている土は淡路のもの。
淡路の土だと、土の粉が出にくく、はがれにくいそうです。

これをコンクリートにしてしまうと、藍の葉にかける水が床上にたまってしまい、その後の工程で支障がでてしまいますが、土であれば、ほどよく水分を吸ってくれます。

阿波藍:寝せ込み
※ 乾燥した藍の葉。手のひらにのせるとふんわりとした印象。

阿波藍:寝せ込み
※ 水の量は多すぎず、少なすぎず。

100%乾燥したパリパリの藍の葉に水をかけていきます。昔はひしゃくのようなもので水を打っていましたが、現在では水の量を加減しやすいホースノズルが活躍中です。

藍の葉を土間に広げて、水を打っては混ぜて・・・としていると、お茶のような、独特の香りが漂ってきます。藍建のときの発酵した香りからは想像もできない、実に良い香りです。

阿波藍:寝せ込み
※ 道具をうまく使って、満遍なく濡らしていきます。

かける水の量が少なすぎるとうまく発酵しません。程よいしめり具合というのがあって、ギュッと手で握っても水が出てこない程度で止めてやります。
適量、というのは難しい。

「寝せ込み」は、こうした行程を何度も繰り返し行います。

阿波藍:寝せ込み
※ 水がうまく回るよう、丁寧に混ぜていきます。

阿波藍:寝せ込み
※ 藍の葉に水を打つ藍師の新居修さん(国選定文化財阿波藍製造技術保持者)

阿波藍:寝せ込み
※ 藍師の仕事も、次代に。

阿波藍:寝せ込み
※ 水を打ち終わった後にきれいに整えられた藍の葉。

乾燥した藍の葉を土間にいれ、水を打ち、程よく混ぜて、整える。
この作業がひたすら繰り返されます。

阿波藍:寝せ込み
※ 前日の寝せ込みで仕込んだ藍の葉。

新居さんの製藍所には寝床が複数ありますが、そのうちの一つでは、既に「寝せ込み」の作業を行ってから1週間たったものもありました。

阿波藍:寝せ込み
※ 作業開始後1週間経過した藍の葉。カビが出て、表面が白くなっているのが見えます。

藍の葉の中に手を突っ込むと、結構な熱さです。この時点では40度ほどでした。水を打っていることもあって、寝床自体の室温・湿度はやや高めです。

お茶のような芳ばしい香りは、1週間も経つと発酵臭になって鼻をつくようになります。藍染体験をした人であれば、「藍の液の発酵した匂い」といえばなんとなくわかるかと思いますが、それよりももう少し生々しい匂いです。

藍の葉の棚、中央に小さく見えているのはお神酒。良いものができるよう願掛け中。

阿波藍:寝せ込み
※ 白い部分はカビ。藍の葉にもとから住み着いています。

カビが出るのは表面だけ。内部は温度も高いことから、カビは発生しません。

こうして積み上げた藍の葉は、5日ごとの「切り返し」と呼ばれる作業を重ね、「通し」という作業へとつながっていきます。
通しの作業が始まるのは12月初めごろ。

続く・・・