新居製藍所:藍染になくてはならないスクモ作りの現場③

藍染の素材作り:通し

徳島県・上板町。
前回訪問したのは10月のはじめ。それから2ヵ月経った12月上旬。
暖冬とはいえ、随分と冷え込みを感じられる早朝の上板町は、
高い建物のある風景とは違った朝の静けさを演出していました。

新居製藍所のすぐそばにコンビニエンスストアがありますが、
暖かい缶コーヒーを買って藍が植わっていた畑を眺めるのは、
なんとも落ち着きのある時間のように感じられました。

そんな朝の雰囲気に浸った今回の取材では、藍染の原料・スクモの製造工程の一つ、「通し」の様子を見学してきました。

藍染の素材作り:通し
※ 「切り返し」を重ねてきた藍の葉。これから「通し」が行われる。

前回(10月22日の記事)の「寝せ込み」の後、5日毎に水を打ち「切り返し(きりかえし)」と呼ばれる作業を行います。「切り返し」では、

  • 木製の「四ツ熊手」で切り、
  • 「はね」で返し、
  • 「こまざらえ」で混ぜ、
  • 元の高さに納める

という作業を行いますが、2番刈りの葉藍を加え、以後同様の作業を繰り返し行います。

今回見学した「通し」は、”10番水”を打った後の藍の葉の「通し」が行われていました。

藍染の素材作り:通し
※ 「通し」の様子。発酵が進むことで温度が高くなり、湯気が立ち上っている。

「通し」は「切り返し」を重ねた藍の葉を粉砕機に入れ、細かく砕いて混ぜるという作業です。この作業により、スクモが均等に混ざることで発酵にムラができにくくなり、品質の安定化につながります。

藍染の素材作り:通し
※ 粉砕機にかける前の藍の葉のかたまり。

藍染の素材作り:通し
※ 粉砕機。藍の葉を入れると「ゴパァッ!」という音とともにはきだします。

藍染の素材作り:通し
※ 左手は積み上がった藍の山。これをすべて粉砕機にかけます。

藍染の素材作り:通し
※ 藍の葉をすくっては・・・

藍染の素材作り:通し
※ 粉砕機にかける。この作業の繰り返しです。

藍染の素材作り:通し
※ 作業も中ほどまでくると汗だくに。

「通し」が行われる時期にもなると、藍の葉の発酵からくる強い刺激臭が鼻をつくようになります。湯気が立っているところに立つと、たまねぎを刻んでいるときのように、目が刺激されて涙がでてきます。その環境の中、藍の葉をすくっては粉砕機に掛け、粉砕された藍の葉をならし・・・という作業がひたすら繰り返されます。

藍染の素材作り:通し
※ 粉砕された藍の葉は、一旦部屋の片側に積まれます。

上の写真でもわかる通り、「通し」の作業では一旦壁側に粉砕した藍を積み上げます。毎年毎年、同じ面に藍を積み上げることから、壁の木の部分が濃紺色になっています。

ところで・・・

まだ粉砕機のない時代はどうやって「通し」の作業をしていたのでしょうか?

藍染の素材作り:通し
※ 「通し」の作業を行っている「寝床(ねどこ:製造場所)」の上部。

上の写真の通り、寝床には大きな梁が走っており、その梁に紐を通してザルをぶら下げ、そのザルに藍の葉を入れて粉砕していたそうです。粉砕機がある現代でも大変な作業をすべて手作業で行っていたと考えると、・・・本当に大変な作業です。

こうして、すべての藍の葉を粉砕した後、また元のように部屋の中央に台形型にして積み戻し、その後も「切り返し」の作業を重ねます。

この次の作業はいよいよ仕上げ。新年も明けた1月上旬からはじまります。

続く・・・