【行ってきました】農村の伝統文化を体感する(拝宮農村舞台)

那賀町/拝宮/農村舞台/拝宮農村舞台/人形浄瑠璃/えびす舞/白人神社

徳島県南西部、那賀町拝宮地区

今の時期は新緑が眩しいくらいで、付近には那賀川が流れるなんとものどかな場所です。同地は昔から製紙業が盛んな地域で、農閑期には農家のほとんどが紙づくりに従事していたそうです。現在でも「拝宮和紙」としてその伝統が残っており、和紙作りを体験することができます。(井本紙漉場

同地区は、2005年3月1日に丹生谷地区・鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村の3町2村が合併し誕生した那賀町の中央部よりやや東側に位置しています。

那賀町・住民課によると、2012年1月1日時点での人口は65名(男性:30名 / 女性:35名)となっており、2007年1月1日時点の83名(男性:39名 / 女性44名)と比べ、この5年で21.7%の人口減少となっています。

農村舞台公演を見に町外から訪れる人もあり、また、小さい地区ながら農村文化を身近に体感できる自然が豊かな地区・拝宮。

記念すべき10回目の【行ってきました】では、第27回国民文化祭・とくしま2012のテーマのひとつ「阿波人形浄瑠璃」に関連し、5月20日(日)に拝宮で行われた拝宮農村舞台をご紹介します。

那賀町/川口停留所
※ 徳島バスの川口営業所前。徳島バス・丹生谷線の終点です。

前回に引き続き、現在環境省が進める「SMART MOVE!チャレンジ25キャンペーン」の取り組みに賛同する意味もあり、今回の【行ってきました】でも「見たことのない”徳島”を見る」ために、公共交通機関を利用し、拝宮を歩いてみることにしました。

徳島駅前にあるバスロータリー。拝宮に行くには、駅から見て左手の島のバス乗り場・5番から出ている丹生谷線で向かいます。

川口営業所まではおよそ1時間半です。川口営業所からはさらに奥に行くバス(徳島バス南部)に乗り換え、春森上に。(春森上は春森の次の停留所)

春森上でさらに那賀町営バスに乗り換え、バスにゆられること約5分。「拝宮口」停留所に到着です。

那賀町営バスに乗る際は、停留所のアナウンス等ありませんのであらかじめ降りる停留所なり、目的地を告げて近いところに下ろしてもらうことをおすすめします。


※ 拝宮口の停留所。赤色の橋を渡る手前にあるのでわかりやすい。

拝宮農村舞台までは、写真の赤い橋を渡るとすぐ右に曲がる道があるので、その道を川沿いに歩きます。

ほどなく歩くと下の写真のような看板があらわれますので、そのまま坂を上って行きます。


※ 農村舞台と紙漉場の方向を示す立て看板。


※ 拝宮の棚田。この日はあいにくの天候。

山を見ながら坂道を歩いていると、農村舞台への期待感に気持ちが高まっていきます。と同時に、少し昔のことを思い出していましたが・・・その話は後程。

何台もの車に追い抜かれ、フーフーいいながら歩いていると、ようやく目的地が見えてきました。


※ 拝宮農村舞台の入口付近。


※ 拝宮農村舞台の入口。

今回は『阿波ナビ』に掲載されていた「公共交通機関を利用した場合」とされた時刻表・ルートを参考にしており、到着したのは公演が始まる5分ほど前(13時開演)でした。すでに地区内外の見物客が集まっており、徳島新聞社の記事によると、当日はおよそ350名が同地を訪れたとのことです。


※ 拝宮農村舞台のある白人神社到着時に撮った境内の様子。

開催情報

  • 日時 5月20日(日)13時開演
  • 場所 拝宮農村舞台(白人神社境内)
  • 住所 徳島県那賀郡那賀町拝宮字白人谷1
  • 主催 拝宮谷農村舞台保存会 / 拝宮谷地域まちづくり協議会
  • 助成 那賀町 / 那賀町農村舞台再生協議会
  • 協力・後援 那賀町 / 那賀町教育委員会 / NPO法人阿波農村舞台の会

舞台当日のスケジュール

  • 13:00 奉納三番叟(ほうのうさんばんそう)
  • 13:15 歓迎行事
  • 13:25 拝宮ふすまカラクリの公開
  • 13:40 拝宮ゑびす舞
  • - 休憩 -
  • 14:20 人形浄瑠璃「増補 大江山戻り橋の段」
  • 14:50 日本舞踊
  • 15:10 寿三番叟絵巻
  • 15:30 お披楽喜

境内を一通り眺めていると、開演時間となって「奉納三番叟」が始まりました。みなさん、一斉に奉納が行われる神社のお社の方に移動し始めました。筆者も遅れをとるまいとついていくことに。

音楽とともに奉納が始まりました。


※ 3人一組で人形を繰る。


※ 人形が3体。9人の呼吸が合う。


※ お社前での奉納が終わり、舞台の方へ移動。

奉納三番叟

  • 出演・・・勘緑+木偶舎 / 丹生谷清流座


※ 奉納が終わった後の白人神社。

13:25からの「拝宮ふすまカラクリ」が始まるため、舞台正面に移動。舞台前の広場は人でいっぱいだったため、2階席(?)からの撮影となりました。


※ 「ふすまカラクリを作動させている」の図。


※ 虎の襖絵×2種類。表に出ている部分以外のふすまが裏に隠れています。


※ 庭園の襖絵。


※ 竜の襖絵。

前回これら4種類の襖絵が拝宮の舞台で披露されたのは少なくとも50年は前とのこと。拝宮農村舞台に現存していた色の褪せた襖絵を修復し、半世紀の時を超えて公開されました。

ふすまのカラクリがゆるりと動き、それに合わせて三味線の音が拝宮の山間に響きわたる中、鳥の声が聞こえてくるのです。何とも気持ちが良い時間です。

途中、ふすまの「建て付け」が悪かったのか(?)ひっかかってしまう場面も見られましたが、ふすまの絵が替わる度に会場から声が出て、拍手が起こりました。

拝宮ふすまカラクリ

  • 出演・・・拝宮谷農村舞台保存会
  • 三味線・・鶴澤友輔


※ ゑびす舞を見る。


※ 鯛を釣り上げる直前の船を漕ぐシーン。

拝宮のゑびす人形は、人形師「天狗屋久吉」の作。

「ゑびす舞」は、五穀豊穣・無病息災などを祈願する縁起の良い演目です。

この演目にはゑびすさまの動きに合わせた唄が歌われるのですが、筆者自身、これまでテープに録音された舞台しか見たことがなかったので、生歌バージョンは初めてです。途中、歌い手の方がどこまで歌ったかを見失い、

「あれ。どこまで歌ったかいな~。」

その一言に会場が湧いて、辺りは楽しい雰囲気に包まれました。筆者自身、その時まではもう少し固い考えで奉納~ゑびす舞を見物していましたが、その出来事があったことで農村舞台がなんとも身近に感じられ、純粋に楽しむことができました。

ゑびす舞も終わりを迎えたころ、あまりよろしくなかった天候が変わり雨が降り出しました。ちょうど休憩に差し掛かるところだったのでよかったのですが、一時はこのまま中止になるのではないかと思えるほど、雨が強く降りました。

幸いなことにその後雨はしとしと降りになり、そのまま継続されることに。地面に敷かれていたビニールシートは取り払われ、保存会の会長からは

「もうみなさん、思い思い、好きなように座ってください。」

との声。会場からは笑いが起きて、それまでビニールシートの後ろに並んでいたパイプいすを片手に、みなさんずずいっと舞台前に移動。


※ ”逆・雨乞い”のシーン。この後、シートは片付けられた。

雨がパラパラ降りになったころ、次の演目が始まりました。


※ 「増補大江山戻り橋の段」舞台前の様子。傘が目立ちます。


※ 雨の中の「増補大江山戻り橋の段」。雰囲気でます。


※ 顔がパカッとなります。顎落(あごおち)というそうです。


※ 以前、阿波十郎兵衛屋敷で見た顎落。これがパカッとなります。


※ 人形洋さんに説明を受けた際のパカッとした図。

平安時代、源頼光の家来・渡辺綱は、睦月のころになると鬼が現れるとのことで都中を警戒していた。ある春の夜更け、一条戻り橋に差し掛かると美しい娘がたたずんでいた~~・・・・という物語。ご興味ある方はネットなどで内容をご確認ください。

増補 大江山戻り橋の段

  • 出演・・・阿波人形浄瑠璃研究会青年座
  • 三味線・・鶴澤友輔

雨は相変わらず上がらず。次の演目に。


※ 猿若流の日本舞踊。写真は猿若秀延さん。

農村舞台の裏側は引き戸になっており、舞台背後の景色を望めるようになっています。舞台の背後に見える景色と踊りのコントラストが、なんとも涼やかです。

天候が良ければ、緑の色も映えてまた違う雰囲気を楽しめたであろうと思います。

日本舞踊

  • 猿若秀延(猿若流名取)

このあたりから、雨も随分弱くなってきました。


※ 寿三番叟絵巻・拝宮農村舞台オリジナル。三人の呼吸を合わせて操ります。


※ 着物が鮮やかです。


※ 別の人形です。。


※ 舞台の外に出て、会場を囲むように各人形を配置。


※ このあたりになると、いったい何体の人形がでてくるんだろうかという気持ちに。


※ 舞台の上に3体。舞台外にも複数体。鈴がしゃんしゃん鳴ります。


※ カメラ目線になる人形。


※ 「奉納三番叟」に出ていた白装束の人形が登場しクライマックス。


※ 保存会会長のご挨拶で締めとなりました。

天下泰平・五穀豊穣・長久円満・千秋万歳・所繁盛・子徳人の子宝などおめでたい言葉が語られ、結婚式などのおめでたい席で演じられる「寿三番叟絵巻」。

「拝宮農村舞台オリジナル」たるゆえんは、三番叟が白人神社のいたるところに現れるところ。神社に集まってきた人たちに恵みと喜びがもたらされるように、との願いが込められています。

たしかに、初めからクライマックスまで見ていると、どんどん嬉しい気持ちになっていきました。人形が持っている(?)鈴の「シャンシャン」と小気味よくなる音も気分を盛り上げてくれました。

寿三番叟絵巻

  • 出演・・・
  •    勘緑+木偶舎
  •    阿波人形浄瑠璃研究会青年座
  •    丹生谷清流座
  •    人形浄瑠璃とくしま座
  •    ポラリス座
  • 三味線・・・鶴澤友輔

お披楽喜となり、「”福”を”おもち”帰り」ということで、境内にいた人たちみんなでイスを片付け、餅投げが行われました。


※ 餅投げの様子


※ 餅投げ後のおひらきのご挨拶1


※ 餅投げ後のおひらきのご挨拶2


※ 幕引き後。うっすらと人形の影が。


※ 幕引き後は記念撮影をする姿もみられた。


※ 帰り際に撮影した拝宮農村舞台。

この後、筆者はまたテクテクと歩いて山を下りました。

帰りの際は雨もあがり、山々には”もや”がかかり。坂道を滑り落ちることもありませんでしたが、帰り道、寄り道などしている内に帰り予定のバスに乗り遅れ、結局最終便で徳島市内に戻ることに。野宿一歩手前、あぶなかったです。

筆者が初めて農村舞台を見たのは17、8年ほど前、犬飼農村舞台でのこと。月明かりが妙に明るい夜に行われた農村舞台は、小学生だった筆者にとってはあまり興味をそそられるものではありませんでした。

結局、その時はだだをこねて、舞台の途中で帰ることになったのですが、月の明りが無ければ足元が見えないほど暗い田舎道。そのぼやっと浮き上がった田舎道を、目を凝らしながら、足元を確かめるように慎重に歩きました。虫の音があたりから聞こえる中、それはとても幻想的な光景だったため、その時のことは今でもよく覚えています。

夜の農村舞台というのはすごく「お祭り」の雰囲気があって面白かったろうに、と思えてくるのは年齢を重ねたからか。今回の拝宮農村舞台で、小学生の男の子がだだをこねて「帰りたい!」と言って途中で帰っていった姿を見て、当時自分が小学生だった頃のことを思い出していました。

そういうところでいうと、農村舞台というのはとかく大人が楽しむもので、子供は子供で、別の興味あることに子供同士で没頭する、という光景がどこか自然なように思えてくるのです。

そこから、今後の農村舞台には次のようなポイントがありそうです。

  • 農村におけるカーシェアリング化の推進
  • 子供同士で遊べるようなコミュニケーションの場づくり

筆者は「地方であればあるほど、時代の先端を意識する必要がある」と常々思っています。

今回、公共交通機関+徒歩のみで徳島駅前-拝宮間を往復しましたが、拝宮口までの道のりとその帰り、地元の方を除き、バスを利用しているのは筆者だけでした。

「春森上」などにスペースもあるので、もう少しカーシェアリングを進めて、農村舞台まで走る車の数を制限した方が経済的であるように思います。

2.については、あれだけ周辺地域に杉が植わっているので、地元の木工関係者・事業者にご協力を頂き、町の子供が普段触れないような木製玩具を準備する、など。

どうすればあの場にいたいと思ってくれるのか。何を作れば小学校高学年でも遊んでくれるのか。成果が出ることで、そこがテストマーケティングの場として発展していき、地場産業力の向上につながっていくかもしれません。

保存会、各人形座、三味線、舞踊など出演された方々をはじめ、地元の方たちが協力し合って開催された拝宮農村舞台。こうした伝統文化を今も目の前で見られることは幸せなことです。

本年度は「国文祭2012」の関係から、県内各所で農村舞台を見る機会が多くあります。

平成24年度 県内の農村舞台 開催スケジュール

  • 09月16日(日) 川俣農村舞台(那賀町)
  • 10月07日(日) 北川農村舞台(那賀町)
  • 10月07日(日) 今山農村舞台(勝浦町)
  • 10月14日(日) 小野さくら野舞台(神山町)
  • 10月14日(日) 法市農村舞台(東みよし町)
  • 10月14日(日) 犬飼農村舞台(徳島市)
  • 10月21日(日) 鎌瀬農村舞台(那賀町)
  • 10月28日(日) 坂州農村舞台(那賀町)

国民文化祭のホームページもぜひご覧になってみてください!