【行ってきました】おもわず手が伸びる、新鮮素材のくんせい香(日和佐)

南阿波/南あわ/日和佐/おもわず手が伸びる、新鮮素材のくんせい香/浜吉水産

徳島県南部・美波町日和佐地区

第7回~第9回の「行ってきました」でも取り上げた南阿波・美波町にある同地区は、四国88か所めぐりの巡礼地、23番札所・薬王寺が座し、また、ウミガメの産卵地・大浜海岸を有する自然豊かな街です。同地区内を流れる日和佐川の上・中流域から河口にかけての景観は、静かな雰囲気の続く散策・サイクリングなどにうってつけの場所です。

2006年(平成18年)3月31日に由岐町と合併する前までは、1907年の町誕生以来約100年間、「日和佐町」として海部郡に属していました。現在は美波町の一地区となっており、人口については前回掲載した通り(平成24年4月1日時点で人口:7,830人[男性:3,665人、女性:4,165人]、世帯数は3,489世帯)となっています。

その日和佐地区で、県南の港に揚げられた新鮮な魚介類を使ってくんせいを作っている若い「作り手」がいます。今回の「行ってきました」では、徳島県南部の食品加工分野に現れた浜吉水産をご紹介します。


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※ 朝9時の日和佐。船着き場の風は冷たい。

朝の日和佐駅。午前8時過ぎにJR日和佐駅に到着し、今回の目的地「浜吉水産」に向かう。

燻製が魚が好きでいろんな燻製屋さんの燻製を食べて思ったのがどれもこれもおいしいんだけど・・・
また食べたい・・・?
添加物が・・・  くん液が・・・  ピックル液は・・・
 
だったら、自分で作ってみよう!!と思い日本人向けの調味料 塩、醤油、味噌、みりんをベースに味を考案し体に優しいかつ子供から年配の方まで召し上がっていただけるように製品化しました。魚介も海洋汚染の少ない近海物、誰がいつどこで獲ったかわかるものにこだわっております。
「浜吉水産」ホームページより)

とは、代表の濱さんの言。

浜吉水産では、月曜~金曜にかけて、鞆浦漁港をはじめとした県南の港で、その日揚げられた新鮮な魚介類を買い付け、その日のうちに加工している。さばく魚の量も相当なものですが、鮮度が落ちる前に下ろしてしまわないと良いくんせいにはなりません。実際、「あるでよ徳島」ではシイラ、ソウダガツオ、タコのくんせいを販売していたが、どれも素材の新鮮さが良くわかる出来です。

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※ さばいた魚は味付けをし、加工場内の乾燥室にて冷風乾燥させる。

「くんせい」というと、筆者の素人的感覚では「素材を煙で包んで香りづけしたようなもの」というイメージでしたが、浜吉水産さんのホームページをみると、「燻煙で巻く必要性」が見えてきます。

食材を薫煙(香りの良いサクラなどの木材を高温に熱した時に出る煙を食材に当てて風味付けをすると同時に、煙に含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させる食品加工技法)することで保存性を高めると共に特有の風味を付加した保存食、またその調理法のことで、燻煙により煙中の殺菌成分が食品に浸透すると同時に、長時間の燻煙によって食品の水分量が減少することで起きる水分活性の低下により保存性が高まる。また、下処理として塩漬けする場合が多く、これによる脱水・加塩も保存性の向上に寄与している。燻煙の前には一般的に乾燥処理を行う場合が多い。(参照:浜吉水産ホームページ「燻製とは」

ということで、つまりは保存のための加工技術の一つというわけです。

一方で、現代は過去に求められていたものとは違うものが求められており、それだけ現代人の食生活の幅が広り、嗜好としての意味合いが以前にも増して強くなったとの説明をされています。

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※ 燻製を作る前の様子。燻製器はオリジナル。

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※ サクラのチップ。地元・日和佐のサクラを使用。

サクラのチップはザラメと交互に入れてショートケーキ状にします。サクラのチップは主に香りづけに、ザラメは色つやを出すために使われます。

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※ 陽の光でキラッキラに輝く燻製前の魚。

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※ 火を入れる前に、処理済みの魚介を燻製器に詰めこみます。

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※ 左が代表の濱さん、右は取材中の美波町観光協会・徳永(かめたろう)さん。

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※ 下処理をし冷風乾燥させたアオリイカ。

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※ 燻製器から出る煙。もっくもく。

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※ 交代で燻製器を見守る。火の具合や風向きに気を配ります。

この日はやや風が強く吹いており、当初は風向きをかなり気にしていました。というのは、風の向きや強さによって燻製器内の煙が上手く外に逃げず、器内にこもることがあるようなのです。そうすると、くんせいの出来上がりにムラがでる原因になってしまうため、風の強い日は特に気を使っているそうです。

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※ 熱の通りを均一にするため、定期的に網の位置を入れ替える。

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※ できあがりが近い魚のくんせい。

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※ できあがりが近づくと気分も揚々、燻製器の周りがにぎやかに!

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※ できあがり!

代表の濱さん曰く、燻製後は時間を少しおいて、くんせい周りの環境を落ち着かせてやると美味しくなる、とのこと。
「できあがり」もいただきましたが・・・おいしいです。

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※ できあがったくんせい。

くんせいができあがるまでの時間、繰り返し燻製器をのぞいては網の位置を変え・・・という作業をひたすら繰り返します。作業が夜遅くまで続くこともあたりまえにあるそうです。

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※ 陽も沈んだ頃の加工場前。

こうして月曜日~金曜日の間に仕込んだ魚のくんせいを、毎週土曜日と日曜日、近所にある道の駅「日和佐」をはじめ、毎月最終日曜日にはとくしまマルシェ、その他販売の機会があれば積極的に県内~県外の販売イベントに出かけています。

とくしまマルシェや県内の販売イベントで浜吉水産さんを見かけた際は、気軽に声をかけてみてください。