高知県との県境・那賀(なか)郡那賀町。
徳島県南西部に位置し、人口はおよそ9,300人です。平成17年3月1日、鷲敷町(わじきちょう)・相生町(あいおいちょう)・上那賀町・木沢村・木頭村(きとうそん)の丹生谷(にゅうだに)の計5町村が合併し、現在の那賀町となりました。西部~南部を山に囲まれ、地域の9割以上が森林となっています。
今回訪問した那賀町の木頭(きとう)地区は、平成16年3月時点の人口1,790人。村の98%が森林で、このうち約33haは人の手の入っていない原生林です。
同地区は木頭ゆずの他、品質の高い「木頭杉」や太布織でも知られる、紅葉の美しい地域です。また、「まさにアクアブルー!」と思わず見とれてしまう那賀川の源流もあり、何とも豊かで、ゆったりとした落ち着いた気分にしてくれる土地です。
※ 木頭の助(すけ)にある歩危峡(ほききょう)。台風の影響もあって、今年の紅葉はなんともいいがたい・・
”桃、栗三年、柿八年。梨は十五で実を結び、柚子の大馬鹿二十年・・・”という言われ方をされるように、実生柚子(種から育った柚子の木)が実をつけるには、種を植えてから20年を超える時間が必要です。町役場のある木頭出原近辺には、そうした土地と共に育った柚子がそこかしこに植わっており、簡単に目にすることができます。
※ 国道195号線脇に植わるゆず。
※ 上の写真の南側、那賀川を挟んだ対岸にも柚子が植わっています。
木頭では、木頭ゆずのブランド育成・販路拡大を進めるとともに、安心・安全にこだわった生産の体制を整えており、消費者のニーズに合った原材料とその加工品の生産に、村をあげて取り組んでいます。
11月の初旬は柚子収穫の最盛期にあたります。地区のそこかしこで、一つひとつ丁寧に収穫する様子が見られます。
聞くところによると、木頭ゆずはある程度規則正しく1年ごとに裏作の年が巡ってくることもあって、どこの地区のどの柚子が裏作の年にかかっているのかを把握しやすいとのことです。こうした特徴は、柚子加工を行う上でも安定的に柚子が手に入るということであり、木頭ゆずの強みの一つともいえます。
※ 木頭ゆず!?と思ったらちょっぴり橙色が強い。・・・ゆこうでした。
※ ゆずのある風景。座っていると、柚子のいい香りがほわ~んと漂ってきます。
木頭では柚子が多く取れることから、お寿司を作る際にも、米酢を使わず柚子酢(柚子の100%果汁)を使うようです。筆者はまだ食べていませんが、「かきまぜ」というちらしずしのような郷土料理があり、お客さんが来た時などに供しているとのこと。柚子の生果汁に塩を加えたものを合わせ酢として、煮込んだ旬の野菜・山菜ととともに、文字通りかきまぜて作ります。土地の代表的な料理として、地元の小学校などでも実習で作られています。
徳島大学でも、地域再生プロジェクトの一環として、那賀町民とともに活動をしています。
※ 木頭にある特産品の販売所「よいしょきとうむら」。ゆず系ドリンクのほか、手づくりのパンなども。「よいしょきとうむら」もそうですが、木頭は働いている女性の比率が高いように感じました。女性パワー、どこの地域でも重要です。ぐいぐいと地域を引っ張り続けてほしい。
例年であれば、柚子の黄色とともに紅葉も美しい木頭。静けさに気持ちも休まります。少し足を延ばして、柚子の香りと景色を楽しみに行ってみてはいかがでしょうか。