徳島県南部・海陽町。
海陽町は徳島県最南端にある町であり、JR四国・牟岐線下りの終着駅「宍喰(ししくい)」駅があります。
南西側は高知との県境に接しており、海陽町の北西部には1000mを超える山々が連なり、南東部は太平洋に面しています。町の中央を北から南に海部川、南部には西から東へと宍喰川が流れ、太平洋へと注ぎ出ています。南らしい気候からくるゆるやかな雰囲気が街中に漂っています。
同町は2006年(平成18年)3月31日に、海部郡の海南町・海部(かいふ)町・宍喰町の3町が合併し、現在の海陽町になりました。人口は平成23年11月末で10,836人(男性:5,121人、女性:5,715人)、世帯数は4,732世帯となっており、平成17年時点の人口が11,507人(男性:5,401、女性:6,106人)、世帯数4,686世帯であったことを考えると、6年前と比べて人口は5.8%減(男性:5.2%減、女性:6.4%減)。その一方で、世帯数は1.0%の増加となっています。
現在は海南地区、海部地区、宍喰地区の3地区からなっている海陽町。太平洋を望む美しい海岸線が続き、山側を見れば田畑が広がるのどかな風景を楽しめます。
今回の「行ってきました」では、1泊2日で訪れた徳島県南部の海岸線の町々。1日目に訪れた海陽町・宍喰地区と、同じく海陽町の海部地区海部川以南の地域をご紹介します。
なお、現在環境省が進める「SMART MOVE!チャレンジ25キャンペーン」の取り組みに賛同する意味もあり、今回も「見たことのない”徳島”を見るために、徳島を【徒歩+自転車】でゆっくりと見て回る」ことを副題としています。
※ 阿佐海岸鉄道・阿佐東線「宍喰」駅の外観。
今回はJR「徳島」駅から機車に乗って県南に向かいます。
朝6時50分。
始発は5時47分でしたが、少しゆとりをもって2便目に乗車。お茶を飲みつつ、本を読みつつ・・・機車にゆられることおよそ2時間。海陽町のJR「海部」駅にて、阿佐海岸鉄道・阿佐東線に乗り換え。乗り換えの機車はちょうど隣のホームで乗車客を待っており、乗車後すぐに出発。10分弱で、徳島最南端の駅「宍喰」の駅に到着です。
この「宍喰」駅、”伊勢えびの駅長”でも知られているところですが、この日は残念ながら伊勢えびは見当たらず・・・。
代わりに気のいい駅員さんがおりました。
駅ではレンタサイクルもあり、1日200円で利用可能です。自転車は全部で3台(?)あり、すべて3段階の変速機付きですので便利です。
- レンタル料 1日200円
- 営業時間 8:30~17:00
自転車を借りる際は、駅員さんに声をかけてみてください。レンタルには最初に1000円の保証金が必要ですが、自転車返却時に返してもらえます。
さて、自転車を借りて、いよいよ出発です。
より大きな地図で 今回の南あわサイクリングコース を表示
最初の目標は道の駅「宍喰温泉」です。
道の駅「宍喰温泉」は、阿佐東線「宍喰」駅より徒歩約10分の距離。海岸線を走る国道55号線沿いにあります。
※ 道の駅「宍喰温泉」。館内にはお土産店とお食事処等がある。
この道の駅の南側にはホテルリビエラししくいがあり、「宍喰温泉」の名前の通り、入浴設備を備えています。
また、道の駅の建物に隣接する形で、北隣には産直施設「すぎのこ市場」があり、地元の野菜・水産品・加工品などが並んでいます。魚好きの筆者にはたまらない鮮魚の刺身の外、箱ずしや五目チラシなども買えますので、なかなか商店などもないことから、お遍路をされる方なども重宝しそうです。
※ 道の駅「宍喰温泉」に隣接する産直施設「すぎのこ市場」
朝ごはん代わりにすぎのこ市場で買ったお刺身を海を見ながらほおばる。
・・・至福の時です。
食べ終わった後は、マリンクルーズやシーカヤックのスポットとして知られる竹ヶ島へ。
※ 竹ヶ島に行く途中、道路から見える海の色が素晴らしい。
※ 竹ヶ島のなかほどにある竹ヶ島神社。
竹ヶ島はまぐろ漁で知られる小さな島です。そう広くはない島に小さな漁村があり、そこにはちょっとした路地も。
元々、竹ヶ島にはキャンプスペースもあったようですが、現在は使えなくなっています。その元キャンプスペースのすぐ横には、何やら島の中央に登って行く階段が・・・。
登った先には、竹ヶ島番所(遠見)跡がありました。
※ 過去にキャンプスペースがあった場所に向かう竹ヶ島の路地。
※ 登り階段の手前にある小さな海岸。水がきれいで、思わず手を浸しました。
※ 竹ヶ島の番所跡地。今ではすっかり”憩い”のスペースに。
この番所は「遠見番所」と呼ばれ、昔は洋上に異変があった際に、狼煙(のろし)を上げて隣の遠見番所(乳ノ崎狼煙台)に知らせる通信手段としての役割を果たしていました。
現在では狼煙台の跡地が残るのみですが、一休みする椅子と机もありしばし休息。フーフー言いながら登ってきた道を戻り、次の目的地を目指して竹ヶ島を後にしました。
島から離れて宍喰方面に戻っている途中、竹ヶ島の案内板を発見。
どうやら、正規ルートとは違う道から竹ヶ島に入っていたようです。
※ 竹ヶ島の案内板。前にあるのは、「宍喰」駅で借りた本日の相棒(変速付)
※ 竹ヶ島を離れ、宍喰方面に戻る途中の景色。癒されます。
こうして宍喰の市街地方面へと戻り、海岸線を通って海部地区へ。
この日は絶好の天気!55号線沿いには心地よい風が吹いていて、気分も上々です。見晴らしもよく、海の色もひときわキレイなブルー。
ちらほらと、歩きのお遍路さんを見かけました。
※ 55号線沿いを歩くお遍路さん。23番から24番までは70km以上あるので大変です。
しばらく進むと、右手には那佐(なさ)湾と乳ノ崎が見えてきます。
この那佐湾の北岸には船着き場があって、これだけ天気がいいと、ちょっとした景色にも惹かれてしまいます。
筆者の個人的な印象ですが、・・・沖縄を思わせるようなカラフルな景色。徳島の北と南の地理的な表情の違い、その面白みに心が躍ります。
※ 那佐湾にある船着き場。緑と青のコントラストが爽やかです。
そうこうしている内に、あっという間に海部の市街地に到着!お昼までは少し時間があったので、今回あらかじめ目星をつけていた波切不動尊に向かうことにしました。
ここのお不動さん、筆者のおすすめスポットです。
お不動さんまでは海部川の河口付近、すぐ南側を流れる支流に沿った道を走って向かいます。周りには植えたばかりの稲がかわいらしく顔をだし、風に揺られる光景が広がっています。
この道、途中から未舗装になります。走るのには不便ですが、この未舗装の道が南あわの田舎情緒の演出に一役買っています。
そして波切不動尊。
※ 波切不動尊までの道は未舗装。「宍喰自転車」も激しく縦に揺れます。
※ 波切不動尊の入口。入口の目の前にかかる橋が目印です。
風に揺れる葉の音、川のせせらぎ、虫や鳥の音。
山門の手前までくると、門の先に見えるその静かな雰囲気に思わず引き込まれてしまいました。
決して大きな山門ではなく、中もそう広くはありません。季節的なものもあるのかもしれませんが、苔の生え具合、光の差し込み加減、それにもともとの静けさも相まって、独特の空気感ができています。
ぼ~っと立っていると、後方から境内に落ちている枯れ葉をホウキで掃く音が聞こえたので、そちらに向き直ってみると、お不動さんの管理をされている方(?)が落ち葉を集めていました。境内の写真を撮りたかったので声をかけ、
「こんなところがあるとは思いませんでした。雰囲気のある場所ですね。」
と伝えると、
「うわっ、うれしい~!!」
と、久しく見たことがないような、本当に気持ちのいい笑顔が返ってきました。「あぁ、ひょっとしたら、ここにある、このほっこり、ゆったりしているのが”南あわ”なのかもなぁ。」と、その人と静かな境内、不動尊のある周辺の環境を見て感じたのです。
※ 波切不動尊の境内。静かで、自然の力が集まってくるような感じです。
※ 石段の先には2本の杉の大木と社、それに巨石が。。。
言い伝えによると、弘法大師・空海が当地を訪れた際、巨大な岩(現在ある石段の先の社の上にある岩です)が将来落ちてくるかもしれないと考え、それを支えるために杉を2本植えたのだとか。現在はそれぞれが結構な太さになっており、根元がくっついています。重さのためか、やや傾いています。
この2本の杉にはさらなるストーリーがあって、正直者はその間を抜けられ、そうでない者は抜けられないのだとか。最初は抜けてやろうかとも思いましたが、筆者は不正直なこともあってか、見ているだけでだんだん無理があるように感じられ、結局間を抜けるのはあきらめました。
※ 木が痛むので、正直者だからって無理をしないでください。
※ 岩が落ちてきたときに支えとなるようにと、弘法大師が植えたとされる杉。
弘法大師にもゆかりがあるとのことで、24番・最御崎寺までの道すがら、寄られてみるのもいいかもしれません。
そうこうしている内に時間も経ち、波切不動尊を後にしました。次は海部の海を見ようと思い、鞆浦の漁協がある鞆奥港に向かいました。
※ 某有名アニメにでてきそうな、まっすぐ+未舗装+カエルの鳴き声が聞こえる道。
鞆奥港に行く途中には、阿南室戸歴史文化道があり、「みせ造り」と呼ばれる縁台が残る街並みが見られます。
※ 阿南室戸歴史文化道ではないが、赴きのある家も残っている海部の路地。
※ 海部川の河口付近。波の形もきれいです。
鞆奥港には、同港にある鞆浦漁協で「魚の水揚げが見られるかな~」と立ち寄りましたが、残念ながら水揚げは終わって片づけをされていました。
その後、昼食をとって、海の見える海岸線の道を引き返し、道草など食いながら宍喰へと戻りました。
ほどなく、阿佐東線「宍喰」駅に到着。牟岐へ向かうことにしていましたが、機車の出発まで時間もありましたので、自転車を一旦返して、しばし駅周辺を散策。が、付近には小・中学校があり、あまり散策が過ぎると不審者と間違われて警察の方に手招きされるようになってしまうと大変なので、おとなしく駅で本を読んで待つことに。
阿佐東線とは海部でおわかれ。海部でJR牟岐線に乗り換え、一路牟岐へ。
牟岐では、地元の特産品を扱う観光物産館「千年サンゴの里」に向かいました。
- 施設名 千年サンゴの里
- 営業時間 10時~18時
- 定休日 毎週火曜日
- 備考 レンタサイクルあり(1日500円/変速器なし)
この物産館では特産品をはじめドリンク類などもおいており、店舗の奥には休憩もできる机とイス、トイレがあります。また、公衆無線LAN(Freespot)も利用可能ですので、パソコンやスマートフォンなどでのインターネット利用もできます。お店の前には駐車場もあります。
今回は「”SMART MOVE”を体現する」ため徒歩でしたが、この日の宿泊場所まではやや距離もあったため、「千年サンゴの里」でも自転車を借りることに。
「千年サンゴの里」では、1日500円でレンタサイクル可能です。牟岐で宿泊する人は、その日のうちに返さなくても、翌日の「千年サンゴの里」開店時間まで借りることができます。詳しくは同店に問い合わせてみてください。
自転車を借り、宿泊先に荷物を置いた後は、牟岐の景色を見るために海岸線~山間の道をひた走りました。
※ 夕暮れ前の海岸@牟岐町
今回は牟岐町での行動時間があまりなく、気が付けば夕暮れ。南阿波サンラインを立ちこぎで走行中に陽が落ちてしまいました。
夏のお祭りなどが有名な牟岐町。またスポット探しに来たいと思います。牟岐の『南阿波丼』も美味しそうですし!
・・・と、次回のことを考えながら坂道を下った後、夜更けの牟岐の町に消える筆者でした。
続く・・・